そよ風アパートメント201 / Lamp

そよ風アパートメント201

そよ風アパートメント201

今となっては笑い話というか、笑い話にしても地味な話ですが、最初このアルバムを聴いたとき、ぼくはてっきり「そよ風アパートメント201」というグループの「Lamp」というアルバムなんだと思いこんでいました。どうしてそんな誤解をしたのか今ではよく分からないのですが、このアルバムを購入したきっかけはタワレコのポップ広告(いわゆる衝動買いというものです)だったので、そのポップ広告がもしかすると紛らわしかったのかもしれません。かなり責任を転嫁していますが。

Lampが出てきたのは、ちょうどEGO−WRAPPIN'やorange pekoeによるジャズ、ソウル、ボサノヴァなどを取り入れたクラブミュージックがもてはやされていた時期です。と言ってもその頃にはすでにそうした音楽に対する世間の熱狂は冷めつつあったと思うのですが、それでもまだ熱狂の余熱は十分残っていて、タワレコなんかではEGO−WRAPPIN'やorange pekoeが大きなスペースを使って特集されていました。そして、LampのCDもその片隅で紹介されていたのです。

ぼくはEGO−WRAPPIN'もorange pekoeも苦手でした。メロディーはなかなか好みだったのですが、とにかくあのヴォーカル・スタイルが苦手だったのです。今でこそ好きなミュージシャンには女性の名前が多く挙がりますが(id:colourless:20050614#p1参照)、もともと女性Vo.は得意ではなかったので、それを引きずってか本格派や濃いめの女性シンガーには今もなお抵抗があります。

しかしLampは違います。一言で表すとするなら「軽やか」という言葉しか思い浮かばないようなその音楽性は、orange pekoeなどとの共通点は感じられるものの、クラブミュージックというよりはフォーキーなシティポップという趣。フルートやアコーディオンといった楽器が醸し出す軽やかな雰囲気を全く壊さない榊原さんの歌声は、疑いなくLampの重要な魅力の一つだと思います。穏やかな永井さんの歌声や、二人のハーモニーも素敵です。

ぼくが一聴してやられたのは「風の午後」という曲で、冬に吹きすぎてゆく風のように軽く、寂寥感のあるこの曲は、今までありそうでなかったタイプのシティポップ。作曲は永井さんと染谷さんがそれぞれ担当していますが、「風の午後」は永井さんの作品。彼が書いた「今夜の二人」は流麗なストリングスに導かれる正統派シティ・ポップで、まるで70年代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る素晴らしい曲ですね。彼の作品に比べると、染谷さんの作品は多少地味な印象もありますが、それでも聴き手を全く退屈させない展開は素敵の一言です。アコーディオンの優しい音色が印象的な「冬の喫茶店」を聴いて早起きをする冬の朝なんて、想像するだけで楽しい気分になります。