Tim Buckley / Goodbye And Hello

GOODBYE & HELLO

GOODBYE & HELLO

中学生の頃、モンキーズのビデオで彼の演奏する姿を見て彼の世界に引き込まれました。(ちなみにその映像は、画質は悪いですが公式サイト−ここの「Video」から−で公開されています。むしろ「Morning Glory」や大好きな「Dolphins」の演奏に感動してしまうかも…)

『Goodbye And Hello』はティム・バックリィ2枚目のアルバムで、ジェリー・イエスターらのバックアップを受けたこのアルバムには、絶望と希望が交錯する神々しいまでの美しさがあります。その美しさは、後期のフィル・オクス(『Pleasures Of The Harbor』〜『Rehearsals for Retirement』の頃。フィル・オクスについてはこちらに分かりやすく、深い解説があります)に通じるものがありますが、しかしどこかで大きな隔たりもあります。それはもしかすると、ティム・バックリィはフィル・オクスより7歳ほど年下であったことに関係があるのかもしれません。ティムの音楽には、1960年代初期のフォーク・リヴァイバルへの感傷が、かつてその中心にいたフィル・オクスに比べると薄く感じられます。フィル・オクスが急速に移りゆく時代へのあきらめと抵抗の中で音楽を生みだしていったとすると、ティム・バックリィの場合は新世代ゆえの哀しみというか、見えない時代に対する希求とあきらめの狭間で産み落とされた音楽というような印象です。

などと余計なことを考えなくても『Goodbye And Hello』は美しいアシッドフォークの名盤です。ドラマチックな「Morning Glory」がいちばん分かりやすいと思いますが、嵐のSEで始まる不安げな「No Man Can Find The War」や思いの溢れる「I Never Asked To Be Your Mountain」など、聴き所が多いです。気に入った方は、個人的には最高のミュージシャンだと考えている、フィル・オクスのアルバムもどうぞ。初期作品はフォーク色が強いので、苦手な方は「Changes」が収録されているライブアルバムや後期作品から入ることをおすすめします。