野沢享司 / 白昼夢

白昼夢

白昼夢

独特の世界観をもつフォークシンガー野沢享司のファーストアルバム。口笛とハーモニカが郷愁を誘う「築地の唄」は最も分かりやすいポップな作品。それが2曲目の「アルバートが唄ってる」になると感情の向くままにかき鳴らされているようなギターに狂乱したようなヴォーカル、詩が一体となり、何とも怪奇で幻想的な世界を現出します。静寂とサイケとが交錯する「揺籃の振動に身を任せて」、高田渡さんのようなユーモアの感じられるフォーク「遊びませう」、フォーク・ブルース「愚痴」なども良いのですが、後半はさらに彼の才気が存分に発揮されています。「空中に遊ぶ空想家の夢(笛吹童子のバラード)」「 回転木馬の切符切りのおじさん」「だりだりでぃんどん」「お菓子屋さんになれたからといって毎日おいしいケーキが食べられるとは限りません」「可愛い息子/僕は一体誰でせう」ともうタイトルからして素敵なのですが、音楽や詞も期待を裏切らない素晴らしいできばえで、聴くものを白日夢を見ているような幻想の世界へと誘います。