Anne Briggs / The Time Has Come

The Time Has Come

The Time Has Come

イトトンボの美しさを捉えた写真にはあまりお目にかかることがありません。それはおそらく接写するとあの繊細な美しさが台無しになってしまうからで、かといって距離を置くと小さいイトトンボはすぐに背景にとけてしまいます。だから写真に写るイトトンボはどこか間が抜けていて、少し寂しい気持ちになります。

でも、実際のイトトンボの美しさというのは宝石ぐらいの価値があるように思います。繊細なのにか弱さはなく、どこか凛として生きているそのバランス、上品な羽ばたきと佇まい。そして何より、あの深い色。蒼、緑、黄など、どこか金属的な色の際だちには神秘を感じます。おそらく、好きな昆虫のベスト3に入るでしょう。

Anne Briggsの歌を聴いていると、ぼくはいつも色とりどりのイトトンボを追いかけた頃を想うのですが、それは彼女の歌に、イトトンボと同様に繊細なのに芯の通った強さのある神秘的な美を感じるからです。シンプルで静謐な女性フォークという点で、彼女はJudee Sillに非常によく似たスタイルを取っています。ただしAnne Briggsはイギリスのミュージシャン、Judee Sillアメリカのミュージシャンなので、英米のフォークに馴染みのある人ならその差に気が付くと思いますが。