林亭 / 夜だから

夜だから

夜だから

ある音楽が、あるミュージシャンがデビューアルバムにむかって成熟し、本質的にはそこですべての芽がでそろうものとすれば*1、フォークやカントリーといった音楽にはその傾向が強いのではないかと思います。それは、そうした音楽は、もちろん歌や詞や演奏も重要ですが、他の音楽とは少し違って歌い手の人間性をすかし見て楽しむところがあることも、一つ理由としてあるのではないでしょうか。(年をとるとだめというのではなくて、慣れとかの問題なんだと思います。年をとっても変わらず素敵な音楽をやっている人も大勢いますが、そういう人たちの大半は初心の大事な部分が変わっておらず、さらにはあまり業界慣れしたところがないのですね)

林亭の『夜だから』は、まだ学生だったという大江田信さんと佐久間順平さんが自費で制作したアルバムで、高田渡さんの影響もあるのでしょうが、オールドフォークやブルーグラスといったアメリカのルーツミュージックを踏まえた暖かみのある音楽にほろっとさせられます。谷川俊太郎の詩に「Salty Dog Blues」風のメロディをつけた「夜だから」や郷愁を誘うバンジョーにませた歌声が魅力的に絡み合う「もういいかげんに」などは、いやこのアルバムは、ウイスキーでも片手に聴きたいですね。

*1:ちなみにこの物言いは他に借りています。