西岡たかし / 風博士

風博士(紙ジャケット仕様)

風博士(紙ジャケット仕様)

タワレコにて、レコードで見慣れた五つの赤い風船の『ソロ・アルバム』や『五つの赤い風船 in U.S.A.』を手にして思わず感動してしまいました。と書くとアナログ派の方はふんと鼻で笑うでしょうか。いや、笑わない気がします。LPとCDのどちらが良いというのは、少なくともジャケットの魅力に関して言えば、判断がつきません。立派な庭園を眼前にする楽しみと、ミニチュアの庭園を愛でる楽しみと、どちらがより素晴らしいのかを判断できないのと同じこと…かどうかは知りませんが、CDジャケットの小ささは、支配欲というか所有欲をとことん満たしてくれます。

今回発売された五つの赤い風船と西岡たかしの6作品のうち、今まで聴いたことがなかったのがこの『風博士』です。とは言っても『CD-BOX』にこのアルバムの曲がかなり収録されていたのでまったく馴染みのないアルバムでもないのですが、しかしアルバムという形で聴くのはなかなか新鮮です。

『風博士』の題名は坂口安吾の作品から来ているのか、しかし『風博士』は「かぜはくし」と読むので関連についてはよく知らないのですが、タイトルの醸すイメージ通り風が吹き込んだ時の爽やかさと切なさが同居しているアルバムだということは確実に言えます。それにしても西岡たかしのメロディーメイカー&シンガーとしての魅力がよく表れているアルバムです。バンジョーやスティールギターの入ったカントリータッチの「春がやって来る」とか、シャープなフォークギターに低くうめくような歌が絶妙に対峙する「森へでかけよう」とか、幽玄なフォークに仕上げた「Plastic Wind(Part II)」とか、個別にコメントすると全曲コメントしなければならなくなるのですが、フォークロック風のスタイルと浮遊感のあるフォークを中心に心に残る曲のオンパレードです。「夏」「風車」「かえり道」「風博士」なんか、本当ならアルバムのハイライトと言っても良いのですが、このアルバムに関して言えばハイライトが多すぎて困ってしまいますね。

明日に備えて早く眠りたいので文章がいつにもまして粗くて適当ですが、でも今回の再発はどれも(個人的には日フィルとの共演ライヴはそこまで好きではないですが)素晴らしいものです。廃盤になっているURC関連のアルバムも再発してもらいたいですが、ひとまず今日はこのアルバムの余韻に浸りつつ眠るとします。