ラヴェンダー・エディション / 朝生愛

ラヴェンダー・エディション

ラヴェンダー・エディション

1曲目、「"Komish..."」のイントロが、ダスティ・スプリングフィールドの"Spooky"のような憂鬱さをもってきこえてきた瞬間から広がる朝生愛の美しさ・儚さ。朝靄に煙る朝の街を散歩する時のように、冷えた感触とすべての音が吸い込まれていくような静寂がただ美しい。海に潜った時のように、周囲の喧噪が急に静まり、耳の奥で特定の音が鳴り響き続けているという、そういう感じもします。そして気怠さはトレイシー・ソーンのように…。これ以上は何も望めませんね。

プロデューサーは石原洋、一部ギターに亀川千代ということで、ゆらゆら帝国が好きな人(ぼくも好きです)も気になりそうな作品ですが、ゆらゆらのようなサイケデリック・ロックとはまた少し違ってフォーク色が強いです。アシッド・フォークという紹介の仕方もありますが、ぼくの考えるアシッド・フォークよりはもうちょっとドリーミーな感じもしますね。もともとぼくが彼女を知ったきっかけは、彼女がJoe & Bingの曲をカバーしているらしいよという情報だったので、そのフォークというセンはそんなに外していないとは思います。

惜しいのは、アルバムの出来とは直接関係ありませんが、オフィシャルにすら1曲の試聴ファイルも用意していないことでしょうか。試聴さえあれば、と思うことはこの人に限らずかなりあります。せっかくホームページを用意したのなら、もうちょっとアピールしてください、とか余計なお世話を。

この美しい世界、聴く人によっては退屈でどれも同じ曲に聞こえてしまったりするかもしれませんが、ロックやポップスの合間にこういうのを聴いてみるのも、そんなに悪いことではないですよ。いきなりアルバムはちょっと、という方には、1500円で出ている『So Far Songs』(←リンク先参照)というコンピに彼女の曲が1曲収録されていますのでこちらをどうぞ。このコンピには渚にて、フリーボ、山本精一なども参加していて、ぼくも今アマゾンに注文しているところなので感想は書けませんが、面白そうではあります。(今日は新宿タワレコに立ち寄ったら、オムニバスコーナーにこのコンピが2枚も置いてあって、アマゾンに注文する必要もなかったかも、と…)とりあえず「"Komish..."」を聴いてもらいたい気もしますが、まあそれはそれとして。