T・P(タイムパトロール)ぼん / 藤子・F・不二雄

T・Pぼん (1) (中公文庫―コミック版 (Cふ1-5))

T・Pぼん (1) (中公文庫―コミック版 (Cふ1-5))

最近の長編ドラえもんを見ていて、ドラえもんは声優の交替よりももっと深刻な問題を抱えているのではと思ったりするのですが、今日のドラえもんはそんなに引っかかる部分もなく普通に見ていました。CGっぽいのは気になりますけど、それはぼくが古い人間だからかも。

藤子・F・不二雄作品の中で一番好きな作品はと問われたら、おそらくぼくは「T・Pぼん」を挙げます。歴史的な事実を踏まえて、歴史には残ることもない人々の姿を描くというのも新鮮ですし、キャラクターの描き方も鮮やかで、(未完成なのですが)トータルでみても非常に美しい作品だなという気がします。美しい、というのはただセンチメンタルだとかそういうことではなくて、一つのコンセプトに沿って生み出された作品の流れが美しい、ということです。妥協なしに作り込まれた作品は、幅広い年齢層から支持されそうです。ドラえもんも幅広く支持されているでしょうが、あちらが童心にかえることによって楽しめる作品だとしたら、こちらは大人になれば大人のまま楽しむことが出来る作品という感じもします。どちらが良いとかいう問題ではなく、楽しみ方の問題で。

残念なのは、当時の健康状態や発表の場の問題が重なったこともあってか、自然と休載状態になってしまったこと。いつかまた書きたいという作者の思いも結局叶わず、作者なき今では続きを読むことも出来なくなってしまいましたが、しかし完成されなかったからこその美しさというものもある、というのは負け惜しみに近いでしょうか。(某グループの『SMiLE』みたいなものです)

書評などはアマゾンにありますのでぜひどうぞ。読まれていない方は、漫画喫茶などに行ったついでにでも読んでみると良いかもしれません。第一部、第二部(と未完成の第三部)に別れていますが、個人的にはやはり第一部に思い入れがありますね。

今読み返そうと文庫本を収納した段ボール箱をいくつも引っ張り出してごそごそやっていましたがついぞ見つからず、よく考えたら実家の枕元に置いてあったよなということに気付きました。脱力。