ZAZEN BOYS II / ZAZEN BOYS

ZAZEN BOYSII

ZAZEN BOYSII

ZAZEN BOYSの同名デビューアルバムを聴いたときは、ひどく内観的というか閉じている印象を受けました。別にノリがどうこうという問題ではなくて、ただ、誤解されそうな言い方をすると、こちらに直接的に伝わってくるものはあまりありませんでした(感動しなかったとかつまらなかったとかだからだめだとか、決してそういうことではないです)。分厚いガラスを隔てた向こう側に彼らはつっ立っているかのようで、彼らはこちら側を向くこともなく、まさに自問自答という雰囲気を漂わせていて、そこから来る疎外感とか空虚さ、置いてけぼり感が絶妙なスパイスとして機能していたように思います。ぼくにとって『ZAZEN BOYS』は精神の奥深くまで侵食してくるような強烈なアルバムであり、同時に聴いているとひどく消耗してしまうアンビバレントなパワーを持つアルバムでした。

そんなファーストアルバムに比べると、この『ZAZEN BOYS II』は内省的な意識を自分たちの内側に閉じこめて完結させてしまうのではなくて、外部に開いていこうという気持ちがより感じられます。その分、前作で感じられた疎外感は薄まり、聴いていて消耗を感じることもなくずいぶんと馴染みやすいサウンドに仕上がっています。どちらがどうとかいうのは好みの問題なので、ただ単純に、両者は根っこは同じでも、外面はひどく対照的だということです。ゲストとして迎え入れられた椎名林檎がヴォーカリストとして前面に出ていることも大きいのかもしれないですね。

音楽的にはラップやファンク、ソウル、ロックなどを貪欲に吸収したZAZEN BOYS独自の音世界です。英語でいうとミクスチャーとかそういう言葉が一番近いのかもしれませんが、すでにそういうジャンル(?)は存在しますし、実際ミクスチャーと呼ばれるバンドの音に近い部分もあるのですが、ただそういう枠には収まりきらない音楽なので、そういう呼び方をするのはちょっと躊躇われます。(実際のところ、部分部分で見るとこれは誰っぽい、こっちはあの人っぽいと挙げていくことは可能なのですが…)

特に印象に残るのは向井秀徳のトーキングスタイルのラップ(馬から落馬みたいに意味が重なってしまいますね)です。ラップとは言っても、無常観を漂わせたそのスタイルは読経の影響が大きいのでしょう。お経というのは聴きようによってはラップ・スタイルの音楽にもきこえますし*1、ラップにその世界観を合わせるとかなり相性が良いのですよね。

いずれにしてもうねりを止めないグルーヴが作り上げる世界観は一度虜になると離れることが出来なくなると思いますので、試聴でもして少しでも気に入ったらぜひアルバムを聴くことをおすすめします。

※(この部分は思いつきをそのまま書き留めただけなので、変な部分があってもスルーしてください)日本でも欧米発祥の大衆音楽をベースとした音楽が主流になって結構な時間がたつので、そろそろオリエンタルなサウンドが逆に新鮮に聞こえる時代なのかもしれないですね。完全にオリエンタルなものはやはり支持は得られないでしょうが、こういう風にオリエントとオクシデントイーストとウエストを折衷した音楽ってまだまだ受け入れられる余地がありそうなので、これからいろいろなバンドが日の当たる場所に出てくるかもしれません。(いわゆる和風ロックとかもその流れに近いのかも)

*1:高校生の頃に見たモンキーズのテレビショウで、法華経を東洋風の音楽にアレンジした短い作品を聴いて、お経を音楽と考えるととてもかっこいいなと感じたことがあります。不謹慎な話ですが、法事に出席するとぼくはお経を音楽だと思って聴いています。木魚でいい感じにビートを効かせてくれるので飽きずに聴けます…。