山口百恵 / ゴールデンJ-POP THE BEST

倍賞千恵子とか言っていたら、スイッチが完全に歌謡曲モードに切り替わってしまったみたいです。

山口百恵というと半端じゃない数のアルバムが出ていて(全22枚)、ぼくもそんなにきちんと聴いているわけではないのですが、でもやはりレンタルを含めるとかなりの枚数を聴いている、大好きな歌手です。

まず第一に何が好きなのかというと、やはり圧倒的なオリジナリティと存在感を誇る彼女の声です。山口百恵という歌手は声域もそんなに広いわけではなさそうですし、ヴォーカリストとしての才能に恵まれていたとも言えないと思うのですが(実際初期の彼女はどこにでもいるようなごく平凡なアイドル歌手でした)、作曲家や編曲家の変化も大きかったのか、1975年頃を境に徐々にスタイルを変えていきます。やがて確立されていった低音に情感を込める彼女独特の歌唱には大人の感受性や哀愁が色濃く反映されていて、聴く者を穏やかな感傷で包み込みます。なんとなく演歌と彼女の歌との関係は、フォークとフォークロックとの関係に似ている気がしたのですが、言葉でうまく説明できそうもないですし全くの見当違いかもしれないので深くは書きません*1。似て非なるものであるのに、切っても切れないようなところが…。

また、作曲家…特に宇崎竜童の貢献も素晴らしいものです。彼の歌謡ロック的な哀愁あふれるメロディーは、彼女のヴォーカルに最適なものだったのだと思います。

「乙女座宮」「いい日旅立ち」「横須賀ストーリー」「秋桜」など素晴らしい曲を挙げればきりがなくて、シングルではない曲にも大瀧詠一の「哀愁のコニーアイランド」など深みのある曲がたくさんあるのですが、個人的に一番のお気に入りは「夢先案内人」です。愛の夜明けを詩的に表現した素晴らしい歌詞と、それにふさわしく旅立ちの希望と不安にあふれた歌とメロディーには、こちらも本当に言葉を失くしてしまいます。そんな面倒なことを考えなくてもうきうきするような楽しさと大人の憂鬱が感傷的な気分にさせてくれる最高に素敵なポピュラーミュージックなので、きっと聴けば好きになる人が多いのではないかと思います。本当に素敵なんですよ。

*1:演歌ってよくアメリカのカントリーと比較対照されますが、この場合はカントリーとカントリーロックの関係だとうまくないので、あえてフォークなのですが。