小沢健二 / 犬は吠えるがキャラバンは進む

犬は吠えるがキャラバンは進む

犬は吠えるがキャラバンは進む

アメリカのフォークには早くから興味を持っていましたが、SSWというものにはあまり興味がなくて、高校の頃までは「SSW」が何の略語なのかすら理解していませんでした。そんなぼくがアメリカのルーツミュージックに目を向けるきっかけになったアルバムが、このアルバムです。今は『dogs』というタイトルになっているみたいですね。

ごつごつした無骨な音と散文詩のような歌詞からは、昼と夜とを繰り返す、熱を帯びた地方で過ぎゆく一日の映像が立ち現れてきて、その生き生きとした様にははっと息をのみます。この地上での出来事を歌っているはずなのに、このアルバムから浮かんでくるイメージはどこか非日常的というか、ありそうでありえない理想郷に近いものなのだと思います。だからこのアルバムを聴くたびに、ぼくは親近感と憧憬とを同時に感じてしまいます。

いちばん人気のある曲はおそらく13分を超える大作「天使たちのシーン」で、個人的に繰り返しよく聴いたのは「天気読み」「地上の夜」「カウボーイ疾走」なのですが、ここ数年はどの曲ということもなく最初から最後までゆったり流して聴く機会が増えました。

元ネタを探していた時期は、今振り返ると少しばかりの恥ずかしさとともに思い出されるのですが、でもそうしたよく分からない努力のおかげでAl KooperStevie Wonderを聴き始めることになったので、まあ無駄なことばかりではなかったかなとちょっと弁解気味に書いておきます。今まで聴いてきたすべての音楽アルバムの中でも、間違いなく上位3枚に挙げるであろうアルバムです。

ちなみに小沢健二はどのアルバムも甲乙付けがたいぐらい素晴らしいのですが、ぼくの好みではこの『犬は吠えるがキャラバンは進む』に続くのが『Eclectic』です。またアルバムを作ってくれるといいのですけどね。