Jeff Buckley / Grace

Grace

Grace

ふんふんと「Only The Good Die Young」(若死にするのは善人だけという、そのものずばりの邦題がついていた)の鼻歌交じりに何か書こうとするのですが、しかし若くして死んだ、もしくは劇的な死を遂げたミュージシャンについて何かを書くのは難しい。ついついこちらもドラマチックな文章を意識してしまうので。ジェフ・バックリィは、父親のティムのこともあって、二重に劇的なのでなおさらです。父親との関係を殊に強調するのも、逆に無関係を主張するのもどちらも白々しく、それでもぼくはいつもティム・バックリィの姿が浮かびますね。もちろん別個に、独立して評価はされるべきでしょうが。

危うさ、脆さと力強さの交錯する美しい声に、何かが乗り移ったかのように次々とあふれてくる言葉。歌っているのは確かにジェフなのに、もっと大きな何かがジェフに歌わせているのだと思わずにはいられません。それだけに、この天賦の才能を早くに失ってしまったのは、何とも惜しい話です。