筒井康隆 / 虚人たち

虚人たち (中公文庫)

虚人たち (中公文庫)

読み返し。ここ一週間ほど筒井康隆作品の読み返しばかり。他は「夢の木坂分岐点」「富豪刑事」「文学部唯野教授」「ロートレック荘事件」など。あと「残像に口紅を」とか。「ロートレック荘事件」はさすがに3度以上読むとちょっと退屈してくるところもありますが、この「虚人たち」や「夢の木坂分岐点」は何度読みかしても面白いです。まったく正反対の感想を持たれる方も多くいるみたいですが。

虚人たち」は、小説内の存在であるということを明確に意識した男が、ほぼ時を同じくして別個に略取された妻と娘を追いかけるという物語。小説が解体されてゆく興味深さもありますが、それ以上に、なんというのかな、この窮屈さ(コンセプトも窮屈なら、読点のない文体も窮屈)が気持ちよいのです。制約の美とでも言うのでしょうか。というか、基本的に美には制約が必要不可欠なのかもしれません。