五つの赤い風船 / 五つの赤い風船 2000

五つの赤い風船2000

五つの赤い風船2000

小沢健二を「オザケン」と呼べないのは、たぶんぼくが小沢健二をリアルタイムで体験していないからで(いや、世代としてはリアルタイムなんですけど…)、同じように藤原秀子さんのことを「フー子ちゃん」と呼べないのはやはりぼくが風船をリアルタイムで体験していないからだろうと思います。だから親や、親の世代の人たちの口から自然と「フー子ちゃん」なんていう愛称が出てくるのが、ぼくにはとてもうらやましい。

それでも藤原秀子さんには思い入れがあって、五つの赤い風船には欠かせないヴォーカリストだという思いが強いので、彼女のいない五つの赤い風船はすでに五つの赤い風船ではないように感じていました。風船は1975年に一度再結成をして、アルバムを一枚発表していますが、これは新曲によるアルバムでサウンドも多少変化しているので、オリジナルの五つの赤い風船とは別物と考えることができます(だからこの「五つの赤い風船 '75」は素直に好きです)。でも、藤原秀子さんのいない五つの赤い風船が、2000年という時代になって改めてかつての風船の代表曲を再録したりして、果たして聴く価値のあるアルバムに仕上がるのだろうかという疑問が拭えずにいました。

そして最近ようやくこの2000年度の再結成アルバムを耳にする機会を得たのですが、結論から言ってしまうとこれがもう本当に素敵なアルバムでした。西岡たかしの書くメロディーはやっぱり普遍的なんだとか、青木まり子さん(やEarly Times Strings Bandの竹田裕美子さん)のサポートが素晴らしいんだとか、いやいやこれが齢を重ねた人たちの凄さなんだとか、いろいろ考えるのですが、結局「最高!」という言葉しか出てきません。アレンジなどは基本的にオリジナルの五つの赤い風船から変化していなくて、もしかすると「あえて再録した意味はあったの?」なんて思う方もいるかもしれませんが、たぶんそういうことではないのです。同じ曲を聴き比べてみると、ほぼ同じようなアレンジであっても、一方(オリジナル)は若き躍動が魅力的で、もう一方(2000年)は音の厚みや落ち着きがその魅力となっていて、結果としてずいぶんと違った魅力を放っているのが分かります。齢を重ねることも悪くないなあなんて、そんなことを考えさせてくれるアルバムでした。

それにしても五つの赤い風船は名曲が多い。あれも名曲、これも名曲と名曲という言葉を乱発しても、彼らの音楽はちっとも色褪せないのが素敵です。今日は何気なく「時計」を聴いていたら思わず胸がいっぱいになりました。オリジナルも大好きですが、このアレンジも大好きです。