細野晴臣 / HOSONO HOUSE

HOSONO HOUSE

今日は「ろっかばいまいべいびい」が聴きたい気分だったのですが、ここのところ西岡恭蔵さんのアルバムを聴く日が続いていたので、気分を変えてみようかと久々に『HOSONO HOUSE』を。

考えてみると、ぼくの好きなアルバムというのはそのミュージシャンのデビューアルバムにあたることが多いです。力んだり戸惑ったり、デビューアルバムというのは完成度という観点から考えると足りないものもあるのですが、その穴の多さが逆に魅力でもあり、それに初々しさというのはほとんどデビューアルバムの特権なので、その初々しさが好きなぼくはついついデビュー盤を偏愛するのかもしれません。

前にははっぴいえんどがあり、後には『トロピカル・ダンディー』『泰安洋行』といった才気溢れる傑作アルバムが控えるこの『HOSONO HOUSE』は、その両者の間で宙づりになったような、シンプルで少し戸惑い気味のサウンドがとても好ましいです。朴訥とした細野さんの歌とペダルスティールの絡みに思わず涙する「ぼくはちょっと」、はっぴいえんど時代を思わせる穏やかで内省的な「終りの季節」「恋は桃色」、以後の活躍を予見することのできる「CHOO-CHOOガタゴト」「福は内鬼は外」など、それがたとえミュージシャンに対して失礼な態度とは理解っていても、ぼくは若さと混沌が作り出す音のすきまに一瞬、理想の音楽という夢を見るのです。