Blue Marble / マサエ・ア・ラ・モード 2

ショック太郎さん(id:bluemarble)が参加されているBlue MarbleのデモCDをいただきました。前回に引き続き、ヴォーカルには大野方栄さんを迎えています。というか、今回は大野さんのソロ名義で、Blue Marbleがサポート役という形でしょうか。今回は全曲カヴァーとのことでしたが、どれもオリジナルを知らないものばかりでした(アルディの「さよならを教えて」を除きます)。

Blue Marbleの音楽は、過去のような未来のような、特定の時代を感じさせない音楽です。そして、過去のような未来のようなとは言ってもその過去や未来はぼくらの前にも後ろにもなくて、それは別世界あるいは想像の世界における過去や未来です。だから、10年経っても100年経ってもぼくらはおそらくその未来にたどり着くことも追い越してしまうこともありませんし、ゆえに「(景色だけ変わり)未来は過去になる」なんていうこともありません。そんなわけで、何十年も未来の人たちがBlue Marbleを聴いたとすると、その時もまた彼らは新鮮な心地になることでしょう。

気だるいムードの「ふたり」は、その気だるさをさりげなく引き立てるコーラスの絶妙な収まり具合が快感でもあります。華やぎのある「Passion」での大野さんのヴォーカルはまるで絵筆のようで、歌声と共に世界が描かれ広がってゆく様子が目に浮かび、その開放感が曲をいっそう華やかで楽しいものにしています。表現力という言葉を信じたくなる、本当に素晴らしいヴォーカリストです。ドリーミィなアレンジに、思わず自分が歌の世界に溶けて消えてしまいそうな気になる「雨の中で」、数々の音が複雑に絡まり交錯し、歌とつかず離れずの絶妙な距離を保ちながら互いに引き立て合う「留守番電話」(この曲のアレンジがとても好きです)なども素敵です。奔放な大野さんのヴォーカルに遊び心いっぱいの楽しいアレンジをぶつけた「お熱なワタシ」なんて、ポップスの魅力をこれでもかとばかりに知らしめてくれます。男性(ショック太郎さんですか?)とのハモリと憂鬱な雰囲気がたまらない「愛の幻」、フランソワーズ・アルディがすっかり大野さん&Blue Marbleの色に染まった「嘘は罪」、大人びて洗練された「Kiss Kiss Kiss」も一級品のポップス。少し無機質な音で刻まれるラテンビートが陽気なムードを高める「右も左も」は、楽しさにかけてはアルバムでも一、二を争うでき。リンダ・ルイスのカバーだという「Love Plateau」(この人は「Spring Song」しか知りませんでした)も、みなさんが絶賛されているとおり素晴らしい仕上がりで、キュートなヴォーカルのとりこになってしまいます。映画的なサウンドが感傷を誘う「あなたの庭で」は、他の曲とは多少毛色が異なるように思えますが、ドラマチックなアレンジにはただ聞き惚れるばかりです。

ということで、今回も全曲に夢中になってしまいました。前回のデモCDは、気が付けばふんふんと鼻歌を歌ってしまうぐらいよく聞きかえしているのですが、今回のCDもそれに負けず劣らず素晴らしいもので、楽しく聴かせてもらっています。素敵なCDを、どうもありがとうございました。