J・T・ウィリアムズ / クマのプーさんの哲学

クマのプーさんの哲学 (河出文庫)

クマのプーさんの哲学 (河出文庫)

クマのプーさんの哲学』というタイトルですがそう肩肘を張ったものではなくて、『プーさん』の何気ない言動に対し狙いすました強引さでもって哲学的な解釈を加えてみたユーモア哲学入門…と書くとぼくの書き方がまずいらしく、やはり堅苦しい本に思われるかもしれませんが、実際はそうではないのです。

たとえば『プーさんは「頭の悪いクマ」である』という主張に対して、著者はこれをいったん受け入れます。なぜなら「いくつかの場面でプーみずからが自分の頭の悪いのを認めているのだから。」しかしプーが自身を「頭が悪い」と言い切ってしまう理由は説明できると言います。それは「プーは、己を無知の探求者と言い続けたあのソクラテスの伝統を引き継いでいるだけのこと」なのです。

こんな調子で、見たまま・読んだままの意味にしか取れないようなプーさんの言動に、ユーモアたっぷりに哲学的な解釈が加えられていきます。こじつけにつっこむのは野暮だ、と言うのも野暮な話で、「おいおい」とか「いくらなんでも」とか心の中でつっこみを入れているうちに読み終わってしまいました。小田島さんの翻訳も良い感じで、「The Pooh Perplex」を「ちんぷんかんプー」と訳すセンスも、一人称の訳し分けも、とてもうまいなあと感心しました。