六文銭/中川五郎 『六文銭/中川五郎』

六文銭/中川五郎

六文銭/中川五郎

ぼくが初めて中川五郎さんの歌を耳にしたURCの「腰まで泥まみれ/恋人よベッドのそばにおいで」というシングル盤には、初期中川五郎の魅力が見事に表れています。シングルの片面にはピート・シーガーの泥臭い反戦歌のカバーを、もう片面にはフォーク・リヴァイヴァルからSSW時代への途上に現れた新世代のフォーク歌手エリック・アンダーセンの美しく内省的なラヴソングのカバーを収め、鮮やかに対比させた妙。このシングル盤を手に取ると、いつもどちらに針を落とすか迷いに迷ってしまいます。

前述の2曲ももちろん素晴らしいのですが、「うた」や「自由についてのうた」なども見逃せない名曲です。「炸裂する黄リンはたしかに熱い/ただれた皮膚の下を苦しく流れる鮮血よりも」というフレーズから始まる重いテーマながら(ちなみにこの曲は薩川益明さんの詩にメロディーをつけたもの)歌から希望が感じられるのは、繊細なギターと(うまくはないけれど)ソフトなヴォーカルのおかげ。炭鉱労働者を取り上げた「コール・タトゥー」もテーマとしては非常に重苦しいものですが、いい意味で青さの残る声とトラディショナルな演奏がその重さをかき消しています。

ちなみに10月頃に中川さんの新作アルバムが出るんだそうです。2年ほど前に発売されたアルバムは「死」をテーマに据えたものでしたが、今度は「愛」「恋」がテーマとなっているそうで、中にはハンバートハンバートの「おかえりなさい」のカバーもあるんだそうです。楽しみですねぇ。