World Standard / 音楽列車

音楽列車

音楽列車

鈴木惣一郎によるWorld Standardのファーストアルバム。流る川のように、そよぐ風のように、心地の良い音楽が流れてきます。ゆったりとした音とコーラスに身をまかせれば、これ以上の至福はないような気がしてきます。

このアルバムの素敵なところは、単に「聴く」という体験にとどまらず、日常世界とは全くの別世界を想い、感じるという体験を可能にするところにあります。別世界というのはこの世界に存在しうる世界ではなく、ただぼく(たち)の想像の中にのみ存在する世界です。(無国籍というといろんな意味でちょっと違和感があります)たとえば宮崎駿のいくつかのアニメ作品に出てくる世界とか、そういうものに近いのです。そうそう、ここで言っている別世界というのは小説内の世界とか映画内の世界とかそういうものに並列されるような世界なのでしょうが、なぜか宮崎駿のアニメの中の世界でたとえるといちばんしっくりくるんですよね。

それはひとまず置いて、『音楽列車』を聴いているとそういうどこともしれない世界で、働き、歌い、踊り、酒を飲む人たちの生活がありありと目の前に現れてきます。俯瞰したり、接近してその世界に(頭の中で)目をこらす。そして次第に世界の境界が曖昧になっていく、ぼくもその世界に存在しているような気がしてくる、その瞬間が至福だなあと思います。