Kenny Rankin / Mind Dusters

マインド・ダスターズ(紙ジャケット仕様)

マインド・ダスターズ(紙ジャケット仕様)

何年か前に一度再発されて、気がついたら廃盤になっていたケニー・ランキンの7作品が再発されていました。7作品中3作がすでに発売されていて、残りの4作品は3月発売予定です。

『Mind Dusters』はケニー・ランキンのデビューアルバムです。後に再演して好評を得る「Peaceful」という代表曲も収められていますが、全体的に若々しさがありますね。ケニー・ランキンというと、ソフトな歌とジャジーで洗練されたアレンジで、オリジナル曲はもちろんのことカバー曲まで完全にケニー・ランキン色に染め上げてしまうようなところがあります。中期はとりわけその緻密さに磨きがかかっていて、『Silver Morning』というアルバムなんかはけちのつけようがないほど素晴らしく完成度の高いアルバムに仕上がっているのですが、本作は中期にはあまり見られない素のケニー・ランキンが垣間見えるところがあって、特に愛聴しています。

そうそう、『Mind Dusters』には私的な雰囲気があります。他のアルバムに私的さがないわけでもないのですが、やはりこのアルバムに比べるとずっとオープンです。その私的さがよく現れているのが、鼻歌のように気さくな雰囲気で語るように歌い出される「Cotton Candy Sandman」で、部屋でひとり口ずさんだり、恋人の前で弾き語りしたりするような私的な佇まいがあります。だから、一つの空間でこのアルバムを同時に聴けるのは二人までではないか、などと感じてしまうのです。独断的に言えば、三人以上で聴くとこのアルバムの魅力は大きく損なわれるのではないでしょうか。いや、三人以上とか、根拠があるわけではないですが。

アルバムにはオリジナル曲とカバー曲がバランスよく配置されています。最初に書いた「Cotton Candy Sandman」は冒頭と幕引き(reprise)に配されていて、このアルバムを代表する曲となっています。流れるように歌われる「Peaceful」は、文字通り穏やかで心安らぐ名曲。歌も詩もドリーミィな「My Carousel」という隠れた名曲もあります。一方で、カバー曲ではディランの「Tambourine Man」がすっかりケニー・ランキンの色に染まっていて思わずにやりとしてしまいます。フレッド・ニールの「The Dolphin」も、まるでオリジナルであるかのように伸び伸びと歌われています。「The Dolphin」ももちろんそうですが、多くのミュージシャンに歌われたフォークの「Come Away Melinda」(日本では高石友也が「お捨てメリンダ」というタイトルでカバーしていました)あたりに、ケニー・ランキンのフォーク・ルーツを感じることもできます。