Dennis Wilson / Pacific Ocean Blue: Legacy Edition

Pacific Ocean Blue / Bambu

『Pacific Ocean Blue』が、もう15年以上も前にCD化されたきりずっと廃盤状態とは嘆かわしいことと思いつつ、数年前にビーチボーイズ作品が再発された波に乗りきれなかったのでまた当分再発のチャンスはないと考えていましたが、ついに実現しました。

もう何度聴いたかしれない「River Song」がやたらと胸に迫ります。豪放磊落かつ繊細という矛盾するような性質が、何の違和感もなく同居しているのがデニス・ウィルソンという人の魅力であり、その魅力がそのままに反映されているのが彼の音楽なのです。豪快な曲にも、繊細な曲にも、彼の音楽には「生」の躍動があり、また表裏の関係としての「死」がどこかに息を潜ませているような感覚があります。だから、彼の音楽は、人をその根本から揺すぶるのです。

今回は『Pacific Ocean Blue』の他に、未発表に終わったセカンドアルバムのセッションからなる『Bambu』の音源がようやく日の目を見ました。ブートレグ等で聴かれる音源とは異なり、かなりオーバーダブが施され、より完全な形で収録されています。（でもブートレグで聴いたあのシンプルな歌と演奏も捨てがたいのですが）ずいぶんと小綺麗になった「Constant Companion」に驚いたりもしましたが、「Love Remember Me」や「I Love You」など魂の歌と呼ぶに相応しいソウルフルな歌が胸を打ちます。

ボーナストラックとして、元はトラックのみ録音されていた「Holy Man」に、Foo FightersのTaylor Hawkinsがヴォーカルを吹き込んだバージョンが収録されています。Taylor Hawkinsの歌はかなりデニスのスタイルに忠実で、結果としてこの試みは大いに成功していると思います。