James Kirk / You Can Make It if You Boogie

You Can Make It If You Boogie

You Can Make It If You Boogie

James Kirkという人にはどうも特別な魅力があります。歌がうまいわけでもなくどちらかというとへろっとしていて、ギターだって特別うまいわけではありません。でも、曲作りも歌もEdwyn Collinsが中心となっていたOrange JuiceからJames Kirk(ともう一人)が脱退した後、Orange Juiceが、悪くはないけれどそれほど特別ではないバンドになってしまったという事実は、James Kirkの存在の大きさを感じさせるには十分です。

『You Can Make It if You Boogie』はJames Kirkが2003年に発表した最初のソロ・アルバムです。James Kirkは1982年にOrange Juiceを脱退した後、Memphisというバンドを組んで1枚だけシングルを出してそのまま音楽シーンからは離れてしまったと知っていたので、このアルバムが出た頃はちょっとびっくりした記憶があります。

その『You Can Make It if You Boogie』は、2000年代に入ってからでたアルバムでは特に印象に残ることになったアルバムで、あるいは2000年代以降という限定を外しても素晴らしいアルバムです。フォークやソウルなどをうまく消化したサウンドは、ポストパンク・バンドと言われたOrange Juiceのような焦燥感はまったくなくて、Memphis時代の「You Supply The Roses」(You Tubehttp://www.youtube.com/watch?v=kELrWpKkVaA)で聴きました。コンピレーションとかでCD化してもらいたいです。このアルバムには「Krach Auf Wiedersehen」という同曲のセルフカバーが収録されています。)のように良い意味で力が抜けています。

「Felicity」「Krach Auf Wiedersehen(You Supply The Roses)」という過去の作品のセルフカバーが2曲収録されています。「Felicity」なんかは、Edwyn Collinsが歌っていたOrange Juice時代のアレンジのような尖った感じはなくて、むしろ同じアルバムに収録されていたAl Greenのカバー「L.O.V.E.Love」みたいな脱力感があります。新曲も素晴らしい出来で、Nilssonの「Everybody's Talkin'」に触発された「Nilsson」をはじめ、メロディメイカーとしてのセンスもよく顕れています。

この人には10年後でも20年後でも、あと1枚ぐらいアルバムを出してもらいたいですね。