名前も知らない古いラジオ番組と音楽の話

中学生の頃、リスニングライフの中心は間違いなくラジオでした。CDを買うお金がないので(都会っ子みたく、金がほしいからバイトしようとかそういう感覚はほとんどないです。そもそも仕事が少ない。都会の人も別にそんなにバイトをしているわけでもないでしょうけど)90分や120分のテープを用意してエアチェックをする。そしてそのテープで気に入った曲を別テープに録音して、DJの語りが入っていないセレクション・テープを作成する。その繰り返しだった気がします。当時お気に入りのラジオは、中村貴子さんがDJをしていた頃のミュージック・スクエア萩原健太さんのポップス・グラフィティ、不定期・日替(いや、金曜日だったかも)DJで放送されるポップスアーティスト名鑑などなど。基本的にNHK-FMが中心なのは、陸の孤島である和歌山にメジャーなFM局の電波が飛んでこなかったからです。

ぼくは中学生の頃からビーチボーイズに夢中になりましたが、その割に山下達郎にはほとんど思い入れがありません。アルバムも一応聴いていますが、特別なアーティストというのではないです。それは、たぶんNHK-FMしか入らないという環境によるところが大きかったんじゃないかと思います。ご存じ山下達郎のサンデー・ソングブックはもちろんNHK-FMではないので、結局サンデー・ソングブックはほとんど聞きませんでした。別に達郎ファンはみんなサンデー・ソングブックを聞いていると思っているわけではないですが、でもすぐ手の届く場所に彼がいなかったというのは結構大きかった気がします。今はラジオなんてあまり聞く人はいないかもしれませんが(大好きだったFMステーションという雑誌もその頃休刊になってしまいましたし。まだミュージシャンだったユースケサンタマリアが何でも相談をやっていたのですが、あの頃からエロ路線ではありました…)、ラジオがまだ影響力を保持していた頃に地域別でアンケートを取っていたら、他の地域に比べて和歌山(特に紀南)は達郎ファンが少ないという結果が出ていたと思います。

そんな感じで重要だったFMですが、特に印象に残っている番組があります。番組名は思い出せませんが、男性と女性がDJをつとめていて、第一回がブリティッシュ・ロック特集。第二回がアメリカン・ロック特集。第二回以降は結局聞きませんでしたが、第一回のラジオはテープに録音して、繰り返し繰り返し聴きました。

その中で放送された曲を覚えている範囲で書いてみると

  • The Hollies 「Look Through Any Window」
  • Dave Berry 「Crying Game」
  • Wayne Fontana 「Game Of Love」
  • The Beatles 「Kansas City ~ Hey Hey Hey Hey!」
  • Unknown 「Black Girl」

「Look Through Any Window」は、こんなかっこいい曲があったのかと衝撃を受けて、その後すぐにThe Holliesのベスト盤を購入した記憶があります。で、そのバージョンに酷くがっかりしたことも良く覚えています。実はこの曲にはいくつかバージョンがあって、一番ポピュラーなのがサビにコーラスが重なるバージョン(シングルバージョン?)なのですが、これがどうにもダサく聞こえて仕方がありませんでした。今考えるとこちらのバージョンが好きな人の方が多いのかもしれませんが、ぼくはこのアルバムに収録されているような、サビでコーラスの重ならないバージョンに慣れきっていたので、コーラスの重なったものは受け付けなかったんですよね。

それはそれとして、いまだに誰だか分からないのが「Black Girl」を歌っていたグループ。「Black Girl」自体はマリアンヌ・フェイスフルもカバーしているトラディショナルソング(採譜は確かレッドベリー)なのですが、このバージョンをいかにもマージービート調にカバーしていた男性ヴォーカルのグループがいるのですが、いくら探しても誰だか分かりません(ちょっと品のない、ストーンズ風のアレンジでした…)。マリアンヌ関係でストーンズもカバーしているのかなと思ったのですが見つからず、結局このエアチェックテープは消してしまったので、今やぼくの頭の中にしか残っていません。しかし歌やメロディーは鮮烈に記憶に残っているのですよね。天下のAll Music Guideすら答えてくれないこの謎のグループ、心当たりのある方はぜひ教えてください。レコードを使っての放送ではなかったので、たぶんCDの出ているグループだと思うのですが。