リチャード・ブローティガン 『西瓜糖の日々』

西瓜糖の日々 (河出文庫)

西瓜糖の日々 (河出文庫)

翻訳の巧みさにうなりました。巧みとか、そういうそっけないレベルではないのかも。作品世界に対する深い理解・愛情と技術的な裏打ちが、言語・文化の壁をほとんど取っ払ってしまっています。原文読まずによく言うよと思われるかもしれませんし、自分でもちょっとそうかなとは思いますが、でもおそらく原文を読んでもこの翻訳に対する評価は揺らがないはず。

詩的で幻想的なストーリーですが、中盤あたりからそれらが一つにつながってきます。一見穏やかで誰もが仲良く暮らしている<アイデス>と酒や暴力、流血が存在する<忘れられた世界>の対比の中で、やがて理想郷と思われた<アイデス>の不気味さが際だってくる…というところでしょうか。ideaやdeathが組み合わさったような町の名前もなんだか示唆的。