中島義道 / 孤独について 〜 生きるのが困難な人々へ

生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春新書)

生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春新書)

ぼくは中島義道という人の考え方は嫌いではないのですが、なんとなく文章が苦手で、『 ひとを“嫌う”ということ』や『うるさい日本の私』は買ってみたものの最後まで読み切るのに苦労したのですが、この『孤独について』は比較的すいすいと読み進めることができました。孤独への向き合い方を著者の半生を振り返る形で伝えてくれるのですが、しかしおそらくほとんどの偽りを排して著者自身の気持ちをストレートに綴ったために、文章は非常にエゴイスティックな印象を与え、そこでおそらく好きと嫌いが大きく分かれます。おそらくこの種の孤独(友人がいくらいても心の持ちようで孤独になります)に悩んだ経験のある人なら多くの示唆を得るでしょうし、事実ぼくも数年前に誰も何一つ分かってくれないのだという自分勝手な、しかしいかんともしがたい孤独に悩まされたことがあるのですが、そういうこともあって著者の考え方に嫌悪感を抱くというようなことはありません。「人間嫌いな人とはじつは自分が嫌いな人なのである」といった指摘はそうだなあと思います。