ハンバートハンバート / 11のみじかい話

11のみじかい話

11のみじかい話

「おなじ話」や「旅の終わり」のように英国のトラッドフォークを意識したような曲がありながらも、そうした視点ばかりでは捉えきらない懐の深さを持ったハンバートハンバートのアルバム。最初聴いたときにはハナレグミを思い出してちょっと身構えてしまったのですが(どうもハナレグミは肌に合わなくて、好きな人がいたらすみません)、聴けば聴くほど好きになっていくようです。

英国のフォークを意識したようなところがあるとは言っても、一般的にぼくが英国フォークという言葉から想起する森の鬱蒼とした暗さはありません。ハンバートハンバートの音楽はむしろ平原で独り吹きっさらしにあるような開かれた哀しみで、この種の哀愁はケルト音楽の影響かもしれませんし、あるいはアルバムの童謡的な部分からきているのかもしれません。

『11のみじかい話』というタイトル通り、それぞれの曲が物語を語ります。その中でもとりわけ童話的な世界観を持ち、わらべ歌のような感触をした「からたちの木」やほのぼのとした「おなじ話」などは一度聴くといつまでも耳に残るような素敵な曲です。曲単位で見てもアルバムとしてみても、やや起伏に欠けて平坦に感じられるところがあるのも事実です。(起伏がないからといって必ずしもつまらないわけではないですが)しかし伸びやかで感情表現に優れた歌やヴァラエティーに富む演奏、何より心に染むメロディーはそうした些末なことを忘れさせるだけの魅力を持っていると思います。