吉田篤弘 / 78

78(ナナハチ)

78(ナナハチ)

1分間に78回転の速度で廻るSPレコードを中心としたお話。様々な人々(やSPレコード)の視点から、さりげない生活や記憶、風景が語られるのですが、それらがある一定の距離感を保ちつつ連環し、重なり合うのが気持ちいいですね。それにしてもこの作品で描かれている世界は本当に夢のような手触りです。細部はリアルで鮮烈な印象を与えることが多々あるというのに、全体を振り返ってみると曖昧模糊としてとらえどころがありません。ふわふわとした夢心地の感覚。作者のロマンティシズムが伺える結末も、ベタなのかどうか分かりませんが、素敵です。