中村まり / Beneath the Buttermilk Sky

Beneath The Buttermilk Sky

Beneath The Buttermilk Sky

中村まりさんの2枚目の、あるいはライブ会場のみで売られている『Traveler And Stranger』を含めれば3枚目のアルバムです。6月に手にしていたのに、最初の印象は前作に比べてどこか地味だなというもので、そこからしばらく聴いていなかったのですが、ここ数日このアルバムばかり聴いていたら、地味なんてとんでもない、素敵なアルバムでした。

ジョニ・ミッチェルをはじめ3枚のアルバムのうち最も彼女の趣味が多彩に反映されている『Traveler And Stranger』(だからアルバムとしては今ひとつまとまりがない感じもします)、そしてそれに続く前作『Seeds To Grow』では、ある程度ミシシッピジョン・ハートのようなスタイルに統一したことで、通して聴けるアルバムとなっていました。

この『Beneath the Buttermilk Sky』も基本的には前作のスタイルを踏襲しています。というのかどうか、ミシシッピジョン・ハートのようなというのはやはり正しくなくて、気がつけばそうしたルーツを下敷きにいつの間にやら「中村まり」としか言えない彼女自身の音を作り上げています。少し線が細く、孤高な響きのあった『Seeds To Grow』に比べると、『Beneath the Buttermilk Sky』はずっと外に開かれた印象を受けますし、暖かみもずっと増しています。アルバムの後半にすすむに連れてブルーグラス的要素が濃くなっていくのも、このアルバムの暖かさの理由の一つかも知れません。

そして何より、このアルバムの暖かで親しみやすい雰囲気を象徴するのが「From The Other Way Around」という曲。突き抜けたような明るさではないのですが、いつになく軽快なこの曲では、唯一無二の中村まりさんの音楽が楽しめます。