さかな / 夏

夏

あまり音楽を聴きたい気分ではないのですが、そういう気分のときであっても何か聴かずにはいられません。こういうのは、音楽好きとは言わないですよね。そんな気分なので、いくつもアルバムを取り出しては棚に戻しというのを繰り返したあげく、ようやく「さかな」(読みづらいと思うのでカッコをつけておきます。)のアルバムに落ち着きました。

実はぼくは「さかな」のことをあまりよく知りません。以前You Tube中村まりさんのライブの動画を見ていたら、「さかな」と共演した映像を見かけていいなと思っていたところ、今年に入って「initial work collection 1990~1991」という4枚のアルバムをまとめたCDが出ていたので思わず手に取ってしまいました。なので、実は「さかな」と「SAKANA」のどちらが正しいのか、どちらも正しいのか、よく分かっていません。

もうすっかり季節はずれかもしれませんが、今日は『夏』を聴いています。時期的にも、ニューウェーヴの時代を思い切り通過してできたアルバムなんだろう、というのは分かるのですが、でも似たようなミュージシャンがすぐに思い浮かびません。日本語で歌われているから気付かないだけで実はCherry Red周辺で聴かれるような音楽なのでしょうか、よく分かりません。ギターの響きにふと朝生愛さんの音楽を思い浮かべたりするのですが、朝生さんのような、最近の「アシッドフォーク的」音楽のような曖昧さはなくて、歌も演奏もずっとくっきりとしています。そのかわりというのではないですが、どの曲も常に破綻へ破綻へと向かい続けるような緊張感があります。もうこれ以上いくと音楽として聴くに堪えない、という瀬戸際をぐるぐると回り続けていて、ミニマルな感じということでいえばYoung Marble Giantsとかを連想したりもするのですが、Young Marble Giantsの方がずっと安定しているように思われます。

全体として質感はほとんど同じですが、同じような曲ばかり聴いているという印象はなくて、連作小説のように曲同士が繋がりながら、全体としても、個としても魅力的です。なかでもすごく好きな曲がいくつかありますが、でも個別の曲を取り上げるのはこのアルバムに対してはちょっと失礼だと思いますので名前は挙げません。しかしこんな素敵なアルバムが1991年に出ていて、しかもそんなに広く聴かれていない(たぶん)というのはちょっと不思議な気がしますね。

initial work collection 1990~1991

initial work collection 1990~1991