角田光代 / ピンク・バス

ピンク・バス (角川文庫)

ピンク・バス (角川文庫)

角田光代さんの、特に初期の作品を読んでいると、読み進めるごとに倦怠と疲労が増していきます。それは部屋の中にムカデやゲジゲジ(←経験あり)が忍び込むような、日常に不意に非日常が投げ込まれた不快かもしれません。

妊娠した女性のもとに、夫の姉がやってきて、奇妙な行動を繰り返す。女性は夫の姉や別段気に留めようともしない夫に苛立ちを募らせていき…という内容。

彼女の(主に初期の)作品が好きなのは、一つは日常と非日常、作品と読者との絶妙な距離感で、もう一つはというと曖昧で不思議な作品の締め方です。明確な意味を読み取りづらいラストが多いのでそこに不満を持つ人もいるのでしょうが、このラストがそれまでの不快を一瞬どこかに追いやってくれるので、爽やかでも不快でもない不思議な読後感が得られるのです。不快を消し去るのではなくて、忘れさせるというのが良いなあと思ったりもします。