角田房子 / 味に想う

味に想う (中公文庫)

味に想う (中公文庫)

旅が料理を語り、料理が旅を語るエッセイ。こういうエッセイは普段あまり興味が湧かないのですが、この本はちらっと眺めたときから面白そうな予感がしていたのです。それは、著者の視点や文体が、お高くとまっているわけでもなく、かと言ってミーハーだったり媚びていたりするわけでもなく、非常に優雅で上品で、それでいてユーモアにも富んでいるからなのです。ヨーロッパを中心にアフリカ、アジア、南米など、豊富な旅の経験を生かしたエッセイが、旅への想いを掻き立ててくれます。

最近ちくま文庫から著者の『甘粕大尉(増補版)』や『責任 ラバウルの将軍今村均』などが再刊されています。この調子で、筑摩書房にはぜひとももうひとがんばりしてもらって、『味に想う』と『いっさい夢にござ候―本間雅晴中将伝』も出してもらいたいものです。