東京天使 / エンジェルス
エンジェルスというのは8人組の売れないアイドルグループで、とか言ってもぼくは世代的に(さらにいえば、地域的にも)はずれているのでよく知らないのですが、シングルを何枚も出していたりそこそこプロモーションもされていたりと全くの無名グループというわけではなかったみたいですね。メンバーの一人は、現在女優として活躍中の奥貫薫。
エンジェルス唯一のアルバム『東京天使』は、全18曲すべてがオールディーズの日本語カバーという現在の感覚からするとちょっと異色のアルバム。でも昔のアイドルって結構さらっとオールディーズのカバーをしていたりする気がします。
ぼくがこのアルバムを買ったのは、彼女たちがカバーしている「夢見るビートルズ」が聴きたかったからです。この曲は、ドナ・リンという女性歌手がビートルズ人気に便乗して発売し、そこそこのセールスを記録したもの。中学生の頃、ラジオでこのドナ・リンの歌う「夢みるビートルズ」を聴いて(実家にエアチェック・テープがあるかも)今でも妙に印象に残っています。しかしこの曲、『続・僕たちの洋楽ヒットVOL.5/1964』というコンピを除いてCDで発売されている気配がないのです。かといって、『僕たちの洋楽ヒット』は手持ちの曲が大半で、買うのももったいない(どこかTSUTAYAとかでレンタルしてないかな)。そういうわけで、ひとまずエンジェルスのバージョンを聴いておこうと思ったのでした。
それにしても、この『東京天使』というアルバムはなかなか良い意味で期待を裏切ってくれます。変に歌唱力とかを意識しない分、ポップスには欠かせない(とぼくは個人的に考えている)軽やかさが失われず、ハーモニーも嫌みがありません。こういうカバー作品というのは力を入れてカバーすればするほどオリジナルとの差が鮮明に浮き出てきて、その出来になかなか満足いかないことが多いのですが、このアルバムでは肩肘張らず楽しみながら歌っているのが良く伝わってきて、相対的に評価されることをうまく逃れています。安っぽくならないよう丁寧に作り込まれたバッキングトラックとの相性もなかなか。
具体的な曲に目を向けると、ドナ・リンの「夢みるビートルズ」のカバーはこんなものかなという感じですが*1、カウシルズの「雨に消えた初恋」はBRIDGE(加地秀基のいたグループ)とかが歌っていそうな雰囲気でかなり楽しいです。「エンジェルスのテーマ」は「タイガースのテーマ」とかと狙いは同じ…つまり「モンキーズのテーマ」のカバーです。デイヴ・ディー・グループのカバー「遠い国XANADU」*2は弾けたアレンジが原曲にひけを取らず、伸びやかなヴォーカルも含めてアルバムのハイライトとも言える出来。レーン&リー・キングスの「ストップ・ザ・ミュージック」からスペンサー・デイヴィス・グループの「愛を下さい」へと繋がるアッパービートのポップスも、自然な形でエンジェルス流にアレンジされていて楽しめます。個人的にベストトラックをあげるとするなら、メリー・ホプキンの「グッド バイ」。愛らしいボーカルと澄んだハーモニー、楽しげなコーラスとすべてが完璧。メリー・ホプキンのオリジナルと比べても、まったく遜色ないと思います。
参考までに曲目リストを。
- 雨に消えた初恋(カウシルズ)
- ロコモーション(リトル・エヴァ)
- 噂のチューチューBOY(マーシー・ブレーン)
- 涙の太陽(エミー・ジャクソン)
- 夢みるビートルズ(ドナ・リン)
- グッド バイ(メリー・ホプキン)
- 恋の逃亡者(ビージーズ)
- Magical Venus Land(デイヴ・クラーク・ファイヴ)
- エンジェルスのテーマ(モンキーズ)
- ストップ・ザ・ミュージック(レーン&リー・キングス/ヒットメイカーズ)
- 愛を下さい(スペンサー・デイヴィス・グループ)
- フォーユアラブ(ヤードバーズ)
- 遠い国XANADU(デイヴ・ディー・グループ)
- モナムール(ウォーカー・ブラザーズ)
- 裸の恋(ステッペンウルフ)
- 黒く塗れ(ローリング・ストーンズ)
- ルビーチューズディ(ローリング・ストーンズ)
- ONE(ニルソン/スリー・ドッグ・ナイト)
邦題だと原曲の想像が出来ないものもあるかも。